J-MELSとは
日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS: Japan Council for Implementation of Maternal Emergency Life-Saving System)は、日本産婦人科医会、日本産婦人科学会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔科学会、日本臨床救急医学会、京都産婦人科救急診療研究会、妊産婦死亡症例検討評価委員会の7団体共同で2015年に設立されました。
本邦の妊産婦死亡数の更なる減少を目指すために、産婦人科医師のみでなく、救急医、麻酔科医、コメディカル等との協働およびそのための実践教育が重要との認識に基づき、あらゆる職種の周産期医療関係者に標準的な母体救命法を普及させることを目的としJ-MELS(Japan Maternal Emergency Life Support)母体救命コースを開催しています。
J-MELSベーシックコース
- 対象:産婦人科医、助産師、看護師(全身管理医*は見学の後、インストラクターを目指すことが一般的です。)
- 一次医療施設で高次医療施設に搬送されるまでの対応の講習です。一次医療施設の妊産婦急変時に、母児の生命予後を少しでも改善するために、正しい初期対応と適切な救急処置管理下での高次医療施設への迅速な搬送が重要な要素であり、シュミレーションを通して学習することができます。
J-MELSアドバンスコース
- 対象:産婦人科医、麻酔科医、救急医、助産師(全身管理医*はインストラクターを目指すことが一般的です。)
- 高次医療施設での対応であり、ベーシックコース受講後のステップアップ講習です。産婦人科医を含む産科スタッフが所属する高次医療機関で、救急医を含む他科の医師、多職種の医療スタッフと全面的に協力しながら、母体急変症例を自らの手で救命していく過程を習得することができます。
*全身管理医とは
全身管理を専らの専門としている医師を指します。具体的には、救急医、麻酔科医、集中治療医を言います。
防ぎ得る母体死亡(PMD; preventable maternal death)や防ぎ得る母体障害(PMD; preventable maternal disability)を確実に回避していくためには、産科管理を専門とする産婦人科医のみならず、重症病態を安定化させる全身管理医の存在も重要です。
全身管理医は、母体の気道・呼吸・循環を保ち、中枢神経系(主に脳)の保護戦略、血液凝固系の恒常性や全身の代謝を維持することを得意としています。母体の全身状態を安定化させる医療介入は子宮胎盤循環(uteroplacental circulation)を改善させ、結果的に胎児(fetus)への酸素供給を維持する介入にもなります。
全身管理医と関連各科が連携して、母体(胎児)救命を行っていくことで、母体および胎児の生命予後の改善(救命)と機能予後の改善に繋がっていきます。