災害医療におけるCommunicationという表現には、
通常の『コミュニケーション』という意味合いの他に、
いわゆる『通信』という意味合いがあります。
ただし、通信が確立されないと有効なCommunicationは図れないわけですので、
『通信』と『内容』の両方必要だし、それぞれを意識することが求められると考えられます。
まず、通信についてですが、これは平時にどれだけ準備できるかが問われます。
すなわち、何系統の通信手段を確保できるか、これが有効に使える状況なのか、
しっかりと準備していなければなりません。
そのために我々日赤医療センターも相当に注力しておりまして、
当科の直通電話の整備、
衛星電話4系統、日赤無線、東京都防災行政無線、簡易業務用無線、防災相互共有波の確保、
日赤無線、防災無線などの施設状況の見直しなどなど、
最大限の努力を重ねております。
音声通話のみならず、いかにしてインターネット環境を確保するかという観点も必要です。
災害時のシステムといえばEMISです。これがつなげるだけのインターネット環境は必要だからです。
なお、通信を心配するべきことは外部との通信だけではなく、例えば院内の通信も重要です。
自分の病院が被災すると、もしかしたら普段使用している内線が故障するかも知れません。
院内PHSが使えないなんてことになると大変不便になると思われます。
新設部門とどうやって連絡するか決める、それぞれの部門に誰がいるか周知する、
それぞれの部門にトランシーバーを割り当てるなど、
かなりきめ細かに院内通信網を構築しないと、せっかく構築したCommand & Controlも機能しなくなってしまいます。
通信ツールには電話のように「1:1」でコミュニケーションをとるものもあれば、
無線のように「1:多数」でコミュニケーションできるものもあります。
FAXやメールのように文字情報をやり取りすることもできます。
遠隔地まで届く通信ツールの利便性もさることながら、
一番確実なのは「Face to Faceで話す」ことでしょうし、伝令という手も確実な手段です。
ただ、同時に遠くに行くのは時間と人手がかかり、現実的でないこともあります。
通信ツールには一長一短がありますので、これらをどう組み合わせていくか、臨機応変に判断していく必要があります。
また、通信の内容は『METHANE report』という手法で伝えると漏れが少なくなるとされます(これは別項目で)。
発災時にはそれまでに収集している情報をしっかりと共有し、
Assessmentに役立てられるようにしていくことが重要となります。